[ 住宅リノベーション / 神戸市 ]
【 Renovation Residence 】
ゼロから家を建てるのではなく、その空間・場所にしかないポテンシャルや空気感を引き出し、新しいスタイルや個性と掛け合わせることによって理想の暮らしを手に入れることができるリノベーションという選択肢は多くの人に選ばれています。
こちらの住宅は、神戸市街地から車で30分ほどの閑静な住宅地にあり、当初は別荘地として半世紀ほど前に開かれたエリアで、どの家も広い敷地にゆったりと建っています。自然環境に恵まれている一方で、高齢化が進み空き家が増え、世代交代に悩まされている地域でもあります。
新たな住み手となったクライアントは豊かな自然や家の広さと室内の暖炉が気に入って購入。昨今ミニマル志向へと進むライフスタイル対し、数多くあるお気に入りのアイテムを隠すのではなく、あえて見せながらインテリアの一部として取り入れるマキシマリストスタイルを目指しています。
フローリングとカーペットの素材で仕上げを分けることにより、その時々の気分によって使い勝手が変えられる「複数のステージ」を作り出しています。1階は、リビングとダイニングの間の壁を取払い極力建具を排除することで、部屋を完全に閉じないセミクローズドな間取りとし、家族も客人もラクに過ごせるパブリック的な「場所」となっています。2階はすべての部屋に建具を設え完全なプライベートエリアとしています。
部屋によって明確に大小と分けてしまうと、サイズによって使う目的が限定されてしまうため、それぞれが一つの居室として成立するぐらいの面積を、バランスよく確保するようゾーニング。広めに余白を残したことで、モノを飾ったり、ちょっと腰を掛けたりするなど、自由な行動を促す「間」も空間の中に生まれました。
また、コレクションされたアイテムたちと室内が違和感なく共存できるようマントルピースや廻縁、建具や性質の良い木を使うなど設えを整えていきました。そうすることにより、古いものと新しいもの、双方の良さが無理なく同居する場所となっています。
住まいとは、視界に入るものや肌に触れる質感などのちょっとした感覚の違いが、人の気持ちに大きな影響を与えるものだと考えています。さらに、光や風などのその立地しか持たない自然の賜物をいかにして建物に取り込むかもリノベーションにおける需要な要素。
一見ラグジュアリー感があるように見える住まいだが、実際に過ごしていると、随所に使われた木や真鍮の色とテラスの緑が目に入り、気持ちが穏やかになります。ひと世代前の郊外住宅を次世代の住まいへとアップグレードすることで、永きにわたり住み継ぐ建築文化が日本に根付くことを願っています。