Shop 豊中市


 大阪・豊中庄内は、人情味に溢れ下町気質のある町です。大阪梅田と豊中市を結ぶ大通りから、少し入った閑静な住宅街にそっとオープンしたのが、「hmc-café」です。
 「自分の地元でもあるこの土地の方々に、少しお洒落で、それでいて日々気軽に過ごしていただける場所を提供したい」というクライアントの要望に応える空間に仕上げました。
 キャンドル製作の講師でもあるクライアントが自らキャンドル作りという楽しい体験を広めるために、店内で予約制の講座を開く「体験型キャンドルワークショップ」とカフェが融合した新感覚のお店。
 敷地は築50年ほどの木造で、湾曲した前面道路に沿うような変則的な形状をしており、元々立ち飲みと居酒屋の2件が同居していた開口が一切ないクローズドな物件。
いかにして、開放感のある店内とし前面道路を行き交う人々にカフェの存在を優しく伝えるかという二つのことを意織しました。

今回のようなそこまで広くない店舗設計では、ゾーニング時に一つのルールを設ける事が重要です。
 扇形の敷地を肯定的に捉え、奥の壁を底辺とみなしエントランスに向けて斜めの軸を設定し、ゾーニングを展開。天井板張りを出入口に向けて放射線状に割り付けることにより、空間に広がりを感じるようにしています。 また、その軸線に合わせてカウンターを設計し、キッチンと客席を区切っています。
解体撤去費に工事費を多く削られたことから、コスト的な制約もあったため、使う素材や色彩を絞ってミニマルな設計を目指しました。
 店舗の入口に、約2.7mのシンボルツリー”カシワバゴム”を造作モルタル製プランターに植え込むことで、訪れた人々が日常から優しい空間へと自然と入り込めるようにしています。このツリーの周りをスタッフとお客様が回遊できるよう鉢のサイズと設置位置を注意深く設計。

モルタル仕上げのキッチンカウンター天板の下に間接照明を仕込み、上から多灯の照明を当てることで印象的に見せています。
 壁はセメント板を仕上げ材として使用し、天板以外の部分を木で仕上げることで、セメントと木の二つの素材のみで構成されたミニマルキッチンとなっています。

 店内の夜の様子。お店の看板とも言える”キャンドル”を灯した時に非日常な空間となるように、全ての照明を調光可能とすると共に陰影が生み出す奥行き感を演出できるよう念入りに照明計画を行っています。

 ファサードから外壁にかけて、テーマカラーでもあるグリーンカラーを塗布。周辺地域に溶け込むカラーとして、ユーカリグリーンとオリーブグリーンの中間色を選択することで、優しさと癒しの効果を持つ魅力的な外観へと生まれ変わっています。
 構造上問題ない部分を解体し、光を採り入れるための開口を設けています。

 宙に浮いたように造作した飾り棚。"KINTO"で揃えた食器やグラスが際立つようにミラーの後ろに間接照明を設置。

左/店舗用に製作したモルタル製のオリジナルカトラリーBOX
中/こちらもオリジナル製作のモルタル製のキャンドルホルダー。クラックしたデザインとしています。
右/お店のテーマカラーと合わせた"HAY"のスタッキングチェア

左/解体中に出てきた構造壁にポジティブなメッセージの文字サインを取り付けることで、通りを歩く人にお店の存在をアピールする効果をもたらしています。
中・右/グラフィックデザイナーと共同製作の置き看板とタペストリー型の看板で視認性を高めています

窓から差し込む柔らかい光が、シナ合板の天井と壁に回り込み空間に活気と奥行き感を与えています。

《 BEFORE ▷ AFTER 》

【ファサード】 BEFORE ➡︎ AFTER

 テイクアウトとエントランスを兼ねた軒先空間は、前面道路に対して凹んでいるため、通りを歩く人に対してアイキャッチのような効果をもたらしています。また、あえてセットバックさせることでファサード部分に立面が増えるため、「雨除け」「出入口」「テイクアウト」「ポスター掲示看板」「防犯カメラ」と多様性を作ることができました。

【店内】 BEFORE ➡︎ AFTER

 木製の天井と壁が持つ自然の温かみに、コンクリート素材で仕上げた床と壁が持つモダンな要素を加えてノルディックモダンのような空気感を作りました。ナチュラルカラーとグレーが調和した無駄のないミニマルな空間が穏やかな時間を提供してくれます。
 大きなカシワバゴムが迎える、この場所が地域の拠点となり「コーヒーとキャンドルで人と人をつなぐ」役割を果たしてくれる店舗となることを願っています。