Shop 北堀江


「attic hair design」は大阪市西区に位置し、堀江エリアの街並みを見下ろす古い雑居ビルの8階に入る美容室です。
開業して7年目を迎える美容室に、オーナーの奥さまが運営するクッキースタジオ"Kammi lab"を併設する”一つの空間を複数の用途でシェアする”ための全面改装計画。
 国内初の試みとなる美容院とクッキースタジオが融合されている場合は、衛生面などから明確に仕切られていなければいけない部分もあるため、分割されたそれぞれの空間に対し、いかに親和性をもたす事がポイントとなります。
 美容室オーナーからの「以前の店舗の歴史を感じれるようにしつつ、お客様と長い月日を共有できる場所」という想いと、クッキースタジオの奥さまからの「運営に必要な什器が入り、且つ不特定多数の人が作業できる効率的で洗練された空間」という要望を形にするプロジェクト。

曲面天井で構成されたトンネル形状のカットスペースは、躯体のコンクリートと呼応するよう全面モルタル仕上げとしています。
 半個室仕様の間仕切り壁は、ヒビ割れ削られた意匠とすることで、年月の経過と共に崩れていき一つの空間となることによって、オーナーの”1人のお客様だけに対し自身のみで接客するプライベートスタイリング”という将来的な展望を表現しています。

左/シャンプーブースの天井には、以前、間仕切りとして使われていたアメリカンフェンスを天井吊りに。
中左/壁を設えた前方にアンティークカップボードを配置し間仕切りとして使用。その横は格子とし施術中に受付を望めるように。
中右/クッキースタジオへつながる通路。硬い印象の空間に柔らかさを出すため、衝立壁の下部をカーブ状に
右/通路からレセプションカウンターを見る。右壁面の隠し扉の中に収納クロークを埋め込み

 クッキースタジオの室内は、コンクリートと白を基調とした無機質な空間にシナ合板を入れることで温もりを与えています。横長のFIX窓を設けることで、隣のシャンプーブースと間接的な繋がりを持たせるように設計。お互いの存在は感じるが、視線が合うことがない絶妙な高さ。
左下/スタッフルームの出入口である正面の扉は、蝶番や戸枠など戸の要素を排除した”隠し扉”仕様としています。右はクッキースタジオの扉

左/カラー剤を持ち出入りするため、カラーラボ入口はアーチ状の開口仕様。
中左/収納棚は、注文されている各メーカーのカラー剤外箱がピッタリ収まる設計としています。
中右・右/トイレは、既存のコンクリートブロック壁を削りながらイタリア製漆喰とモルタルを合わせた退廃的な仕上げに。

 受付カウンターは、オーナーの"お客様と長い月日を共有できる場所にしたい想い"から着想を得て、営業中は淹れたてのコーヒーを振る舞い、営業後はお酒を飲みながら語り合えるような、BARと同格の設計としています。
腰には、以前装飾で使用されていた鋼製の波板を用いることで、モルタル製カウンターと相まってインダストリアルな雰囲気を演出。

左/既存のスチール製ロッカーに錆塗装を施しヴィンテージ感を演出。
右/待合と物販展示を兼ねたオリジナル製作のテーブル&ベンチ。店内の意匠と調和するよう、モルタル仕上げ木目調デザイン。

《 BEFORE ▷ AFTER 》

【カットスペース】 BEFORE ➡︎ AFTER

 このカットスペースの腰壁には、以前、対面カットスペースのパーティションで使われていた木板を裁断し割り付け、施術時に過去の歴史を感じ取れるようにしています。
 また、床面の木調シートを剥がした後に現れた糊の痕跡を活かし、間仕切り壁の退廃的なデザインと調和するよう塗装や削りなど手を加えています。

【クッキースタジオ】 BEFORE ➡︎ AFTER

ほとんど活用されていなかったキッズルームを拡張し、クッキースタジオへ

【カラーラボ・消毒室】 BEFORE ➡︎ AFTER

以前は、カラーラボとしては狭小であったスペースを拡張し、作業もしやすく、且つ大容量の収納も兼ね備えた空間へ

【トイレ】 BEFORE ➡︎ AFTER

 解体時に現れた無骨な箇所を残しつつ、ポイントで削り加工を施しています。白とグレーで構成された空間にステンレスで統一したアイテムを加えることで、無機質で退廃的な空気感を持つトイレとしています。

 今回の店舗デザインを構築するに当たって、全てを刷新するのではなく、過去の要素を取り入れつつ、新しいアイデアを導入することを心掛けました。デザインの背景を通してオーナーの想いや店舗のストーリーが伝わるものになり得たと思っています。