Shop 福岡市


 今回の計画地は、福岡市の中心街から少し離れた博多漁港の西側に位置する「かもめ広場」前に建つテナントビルの1階。面前には、ゆったりとした芝生広場が広がる海の風を感じながら静かに過ごせる公園がある立地です。
 元はバーバーサロンが入居していた物件に、東京を拠点とする「NATAL DESIGN」の濃厚なラインアップを揃えるSCATTER BRAINの2号店を構えるということでスタートしたプロジェクト。
 福岡博多エリアには、ハイブランドが多く高級素材や高コストで作られた店舗が多く存在します。そのエリアから離れた地区であるからこそできる静かな海が広がる贅沢なロケーションに馴染むようなストアデザインを目指しました。
 ファサードデザインは東京世田谷区にあるフラッグシップストアの店構えを踏襲し、白ベースに赤のショップサインとしています。店前の公園が持つ穏やかな空気感を取り込むために、全面ガラス張りの建具とし、心地良い陽射しと海の風を店内に引き込んでいます。また、同ブランドのデザイナー塚田氏が持つ審美眼によって選ばれたアンティークの建具を東京から取り寄せ、ファサード意匠に添えるカタチに。

 通常は仕上げ材で覆って見えなくなる鉄骨や配線などに白塗装を施した上で全て現しとし、そこにカラフルな絨毯や壁紙を追加。国内にはない海外製のビビットな色とりどりの配色は、NATAL DESIGNのアイテムの特徴でもある差し色との親和性を意織し、これら一見派手に見える存在も空間のチャーミングなアクセントになるよう意図しています。
 マテリアルの大半は、鉄骨や使い古した木製床材などのウェアハウス的要素のある素材をベースとし、メインにラグジュアリーな印象のペルシャ絨毯や、アンティーク什器と経年変化した真鍮素材のハンガーパイプなどを加えました。
 このように様々な要素を親和性という関係のもとデザインに落とし込むことで、ブランドの魅力にも通ずる”物作りの背景にこだわった古き良き洋服店”に呼応する仕上がりとなっています。

左/アンティークの"BoConcept"のウォールキャビネットを解体し、陳列するアイテムのサイズに合わせて再構築すると共に間接照明を設置 右/ガラス張りの存在感のあるアンティーク什器

左/独特の柄と色合いのベルベット生地をフィッティングルームの囲いに 右/重厚な造りのL字型キャッシャーカウンター

《 BEFORE ▷ AFTER 》

【店内】 BEFORE ➡︎ AFTER

【ネオンサイン】 BEFORE ➡︎ AFTER

LEDネオンが普及する中で、昔ながらのガス封入型のネオン管ライトを特注オーダー。製作と施工は"Neon and Stripes"の藤本さんに依頼。
 サイン文字は、NATAL DESIGNのスローガン的なメッセージでもある「HELLO NEW DAY! GOOD BYE YESTERDAY!」ネオンライトを点灯すると、天井に淡いピンク色のグラデーションの光となって広がり妖美な雰囲気を演出。

【ファサード】 BEFORE ➡︎ AFTER

 小さな店舗でありながら、まるでガレージの中で洋服やギアを探しているような楽しさと、自然の気持ち良さを満喫できる場となりました。オープン後もさまざまな人や仲間が関わってイベントや面白い企画を発信し続けています。アウトドアシーンの第一線で活躍している「NATAL DESIGN」が九州の玄関口福岡の地に店を構えることによって、博多のみならず九州大陸を席巻するのは想像に難くない。